【その5】


キーワードA「竹とタケノコは使いよう」

楽しみながら竹を制す! 遊びに来た人たちがついでに竹を切る!

  横浜市 日本の竹ファンクラブ 代表 平石真司さんのお話

「10年前、竹林をみた時、見通しが利かず危険な状態だった。 我々が手を入れて明るい公園にしたい。 そこで、ご近所に呼びかけて竹林の手入れを開始した。 最初は20人ほどだったが、集まるのはタケノコの時期だけ。 それではいけないと、竹を切るのが楽しみになればと考えた。 竹を使った遊びや伝統の料理などをいろいろ調べたところ、いろんな情報が集まり、 「楽しみながら竹を切る」を実践することにした。 今ではお年寄りから小学生まで400人が参加している。」

このようなお話で、ボランティアによる取り組みがとても効果的であることを発表されました。

スタジオで実際に楽しみ方、遊び方、食べ方の例として;

 穂先タケノコ を賞味 (約2mほどに伸長中のモウソウチクの先端部を生で食べる)

堀尾アナ 「楽しみながら竹を切る程度で竹林の拡大を防ぐことが出来るのか?」

説明 「竹林はある程度の密度を保てば拡大しない。その目安は番傘をさせる間隔。」

そして、ゲストの松居さん(タレント・歌手?)がスタジオに再現した竹林の中を番傘をさして歩くシーンへ。

堀尾アナ 「では、なぜ竹林を間引くと拡大が防げるのでしょうか?」

説明 「竹が密集すると中に陽が当たらなくなり、環境の良いところを求めて外に拡大します。 竹林を間引き、陽が射すようにすれば、タケノコは竹林の中で育つため、地下茎も拡大しません。」

しかし、この拡大防止法はまったく竹の生理・生態的特徴を無視した考え方によるものです。 まず、竹林の適切な密度管理は竹林の生産力を最高に導くための栽培法の一つであり、一般にいう適当な密度は、 経験的に“傘をさして歩ける程度”といわれています。 しかし、これも竹の種類や栽培の目的によって適正な密度は変わります。 そして、竹林の密度が高まると、陽当たりが悪くなり、そのために竹が外へ広がるという根拠はどこにあるのでしょうか。 この説明は、私にはまったく理解できません。

この説明だと、“竹という植物は意志を働かせることができ、陽当たりが悪くなったところはイヤなので、 新しい陽当たりの良い場所へ逃げ出すのだ”という話になります。

いうまでもなく、“植物は、動物と違い、意志など働かせることはできません。常に環境に適応して生活するだけ”です。 プロローグで宮林先生のご説明に反論したように、“竹林の拡大と竹林の管理法とはまったく無関係”ですから、そのような説明には納得できません。

それでは、竹林が放置されるとどうなるのか。これについては、今から40年以上も前に世界でドクター・バンブーと評価された上田弘一郎博士と 世界の生態学者沼田真博士の共同研究で、「原生竹林の更新とその生態学的研究」(京大演習林報告33、1961)があります。 この研究で、竹林が長年放置されると毎年生まれる竹の量と死んでいく竹の量が一定になり、一種の極相に近い状態に移行することが証明されました。 すなわち、竹林が放置されると、立竹密度が一定になり、生態系が安定した状態に移行していくことが示唆されているのです。

すなわち、竹林が長年にわたって放置されると、その群落の生態系が安定して保持されるようになるのであって、生活環境が変わったので、 生活条件の良い場所へと拡がるのではありません。このことを明確にしておきたいのです。

この番組の構成を思うと、多分、“傘をさして歩ける程度の密度”に目が行き、それを無理に拡大防止に関連付けようとしたためこのような説明になったのだろうと思われます。 この問題の結論として、“竹林の適切な管理法”と“竹林の拡大”とはまったく無関係であることをきちんと説明した上で、番組が構成されるべきであったと思います。

なお、スタジオで、平石さんが穂先タケノコの元の部分には水、「竹水」が溜まり、これを飲むと美人になれるという「一つの楽しみ方」を紹介され、 大いに盛り上がりました。 そして、宮林先生は「ボランティアは基本的には楽しさが一番で、さらに竹林の中に工房や東屋などを造り、 竹と共存できることを目指すとさらに楽しい」とコメントされましたが、まさにその通りと思います。
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