【その4】


キーワード@「越すに越されぬ10センチ」

大阪府「食とみどりの総合技術センター」主任研究員 伊藤孝美さんのお話

「地下茎は1年に5メートル、枝分かれして拡がる。 これが竹林が異常に拡大する原因です。」

確かに、地下茎の伸長量の測定結果では年5メートルという発表があり、その通りです。 ですから、これが新しい土地へ伸び出すと、いかにも異常に拡大したように見えるのです。

「では、どうすれば地下茎を止められるか?」

その一例として、深さ50センチほどの水路(U字溝)が地下茎の伸長を防いでいた例が示され、 “地下茎は深さ30センチを成長するので、それ以上の深さでは進めない”という説明をされました。 また、高さ60センチの波トタンを土中に埋めることも提案されました。

実際には、溝を掘ったり、波トタンを埋める方法はかなり以前からあり、それなりに効果的な方法として評価されてきました。 しかし地下茎は、時には深さ80センチにも潜ることがありますので、万全ではありませんし、 また溝を常に見張り、地下茎が綱渡りしていないか注意する必要があります。

もう一つ、「タケノコを蹴っ飛ばしても、また生えてくる。じっと我慢して、6月になり、 一人前の竹になってから切ること。すると、地下茎の栄養を使い切っているのでもう生えてきません。と説明されました。

この説明は生理的に正解です。しかし、問題は、一旦一人前の竹にしてしまえば、伐採するのが大変な作業になり、 また伐採のタイミングを見逃すと、その新竹がどんどん同化作用をして養分を作り出し、地下茎へ送り続けることになり、 返って大変な結果を招くことになります。

そんなことから、私は若干手間ではあるけれども、「タケノコの蹴っ飛ばし法」を提唱してきました。 この方がタイミングとか労力的により可能だからです。

スタジオ内に竹林が再現され、「波トタンをどこに埋めればいいか?」の場面へ。

会場の深瀬さんは、1メートルほど離れたところを提案しました。 すると、Take2(漫才師?)が実際に掘り出した地下茎を持ち出し、5メートル先に埋めないとダメだと言いました。

しかし、私はどれも正解とはいえません。その正解は、“竹林と接する場所であれば、どこでもいい”になります。
普通、タケノコは2年前以上に伸長した地下茎から発生するので、竹林の外でタケノコを見付けた時点での地下茎は、すでにその先、 5メートルあるいは10メートル以上も伸長しているかも知れないのです。

ですから、波トタンを埋めるのであれば、竹林との境目に埋め込み、その後、竹林の外に出てくるタケノコを蹴っ飛ばせば、それで終わりです。 伊藤さんの説明のように、タケノコは地下茎に蓄えられた養分で成長しますので、葉を持たないタケノコは光合成ができません。 つまり、切断された地下茎の養分を使い切ってしまえば、地下茎もそれ以上伸長できないことになり、 やがて枯死します。

しかし、会場から「広い面積なので、トタンを埋めるなんてことは出来ない」とか、 「コンクリートを持ち上げるほどの力だから、そんなもの埋めても何にもならない」という意見が出ました。 考え方によっては、その通りかも知れません。

地下茎の拡大を止めるもう一つの方法として、千葉県白井市 NPO白井環境塾の例が紹介されました。 それは、3,4本の竹が突然、完全に枯れてしまった。その原因を調べたところ、地中の温度が70度を超えていて、地下茎が熱ですっかり弱っていた。 これは、4ヶ月前、竹を砕いたチップを1メートルほど積み上げた結果発酵したものでした。 そこで、河合泰さんは、人為的にこの状態を作れば地下茎が死ぬのではないかと提案されました。 そのような条件を人為的に作ることは簡単ではありませんが、とても参考になる提案だと思います。
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