竹の病気 「テングス病」
竹にはいろいろな病気や虫の被害が見られます。病気の中でもっとも一般的なのが「テングス病」です。

この病気は、Aciculosporium take Miyake といわれる病原菌に犯されるもので、マダケなどに顕著な被害が見られます。 特に、近年、日本各地のマダケ林に猛威を振るっていて、竹林の衰弱が急速に進んでいます。そこで、この病状を説明しましょう。


紺谷修治氏原図(竹 No.19, 1980)
左の図は、紺谷修治氏が発表されたテングス病の進行状況を示したものです。

まず、上段一番左の図は、昭和35年6月、健全な枝に病気が始まった直後を示し、上段一番右の図は同年10月の状況を示したものです。
下段左の3例は、同年秋から昭和36年3月における羅病状況を示しています。 そして、下段右の図は同年4月の状態を示したもので、この状態になると枝が房状に異常繁殖し、葉もほとんど無い状況が描かれています。

この病気は胞子によって蔓延するものですから、蔓延速度は大変なもので、これに冒されると枝は短期間に徒長し始め、 あっという間に枝が房状に異常繁殖して葉が無くなってしまうという恐ろしい病気なのです。

このテングス病は、その病状から一般に「つるじねんこ病」(蔓自然枯病)ともいわれ、昔からあったのですが、 近年、これが全国的に蔓延してきて、まさに手が付けられない状態にまでなっています。

羅病したあわれな状態
病状と対策

左の写真は、兵庫県龍野市の天然記念物「片シボ竹林」における平成10年1月現在の羅病状況です。 この竹林は天然記念物に指定されている片面だけが交互にシボチクになるという珍種ですが、 それがテングス病にやられてひどい状態でした。このようになると、葉がいちじるしく減少し、 放置しておくと枯死に至る可能性もあることから、これの対策に着手しました。

さて、この病気の対策ですが、結論から言って、「伐って燃やす」のみです。 農薬は一時的には効果があっても完全な対策にはなりません。したがって、単純明快! 伐って燃やせ! のみです。
そこで、このケースでは羅病した竹をすべて伐り倒し、その上で土壌改良と施肥によって竹林に活力を与えるという方法を採りました。 その時、残された健全な個体はそれこそ数本だけという荒治療でしたが、 それから数年後の現在では見違えるように天然記念物の竹林が蘇っていると聞きます。
全国的な問題

テングス病は「活力を失った竹林で発病する病気」と理解すべきです。 先日もこのホームページを通じて、「竹に花が咲いた!」とのメールがありました。そこで、よく聞いてみると、 それは開花でなく、このテングス病でした。ちょっと見た感じでは、枝が異常な形になるので「花か?」と 思われたのでしょうが、実はほとんどの場合、この病気です。

ここで重要なことは、このテングス病と竹林の放置とが一体の関係にあるという事実です。 すなわち、竹林、特にマダケ林が放置されると竹林の衰弱が急速に進み、そしてこの病気に冒されるという結末を迎えます。 さて、どうしたらいいのでしょうか!? 


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