竹林の放任と竹林の拡大との関係は?
報道機関では、「竹林が放置され、荒れ放題だから、竹林が暴れて里山や造林地へ侵出するんだ!」というが、それホント? 結論からいえば、「それは、もっともらしいウソ」と主張しなければなりません。 では、その理由を述べましょう。 今から40年前、世界的な植物生態学者の沼田 眞博士と世界的に Dr. Bamboo といわれた上田弘一郎博士は、 京都市洛西で長年放置されてきたマダケとハチクの混生竹林で7年間にわたって研究された論文が京都大学から発表されました。 当時、私はほんの若輩者でしたが、その研究にお手伝いをさせていただいた経験があり、 その研究の結論には深い関心を持っています。 では、その結果をご紹介しましょう。 |
研究された竹林の林相 |
調査では「100u」の調査区が3個設定され、それぞれの調査区で竹林がどのように推移するかを7年間にわたり、竹だけでなく、
他の植物、動物、気象条件など、総合的な生態的変化が調査されました。 その中から「毎年発生する新竹」と「毎年発生する枯死竹」について、エキスだけ紹介します。 7年間の平均でみると; 毎年発生した新竹の平均本数 14.4本 毎年死んでいった枯竹本数 16.9本 すなわち両者の比率 117.4% でした。 つまり、枯死発生率は若干高いものの、総じて、この竹林では「生まれる竹と死んでいく竹はほぼ同じで、生態的に安定した状態で推移している」ことが確認されたことになります。 |
この調査はかなり急傾斜地で、地形的に特徴があることから、この状態を地形的極相と述べておられます。 極相とは、「植物群落の遷移の最終段階では群落と環境との間に一種の動的平衡状態が成立し、群落は安定して構造や組成が変化しないようになる」状態を言います。 したがって、調査された放任竹林では、一種の動的平衡状態が見られることから、「地形的極相」と名付けられたものです。 すなわち、NHK「クローズアップ現代」で、「竹林が長年にわたって放置されると、竹林内が栄養不足状態になり、地下茎が外へ広がる」と説明した人がありましたが、それは違います。 竹林は竹林内でちゃんと安定した栄養関係が成立しますし、第一、植物にはそうこうしようという意志は働きません。 植物は環境に適応してのみ生活できのですから、竹が人間のように、おいしいものを目掛けて突進するかのような話は成り立ちません。 もう一度、竹林の放置と竹林の拡大は無関係です。 |